読書から国語力を育てることばの学校【今月の一冊】

今月のこの一冊

ことばの学校とっておきの
ラインナップの
1冊を紹介します!

4月の一冊

『ぼくはおばけのおにいちゃん』
あまんきみこ/作 武田美穂/絵
教育画劇 1,100円 2005年初版
テーマ
友だち
読後感
わくわくする
絵のタッチ
輪かく線が太く、はっきりしてわかりやすい

留守番してたら、おばけが来た!
『ぼくはおばけのおにいちゃん』

留守番する幼い兄妹が夜になる心細さを感じています。
唐突におばけが窓からやって来て二人と一緒に夜空をかけめぐります。

ポイント

先日、お子さんに「もう5回読んだよ!」と言われた本をご紹介します。

おばけとの交流というと、ありがちな設定という印象を持つのは大人の側の視点です。
子どもが何度も読み返したくなるほどの魅力は、どこにあるのでしょうか。

まず、大人には単純に感じるストーリーです。
しかし、それが子どもには絵本の絵を見るための余裕を持たせているのです。

星空の絵が、見開きいっぱいに広がります。
おばけが紙面を縦横無尽に飛び回ります。
とても躍動感を感じるページ構成です。

また、ことばにも着目してみましょう。

「ひゅうひゅうひゅう」
「おーい、おーい、おーい」

このように繰り返しが多用されています。
思わず声に出したくなります。

単純明快なストーリー、言葉の繰り返しという、子どもを絵本の世界に引き込む仕かけがそろっているのです。

ぜひ、手に取ってご一緒に朗読してみてください。

3月の一冊

『みずたまり』
森山京/作  松成真理子/絵
1,100円  2011年初版
テーマ
想像力
読後感
じんとくる
絵のタッチ
やわらかい

思い出したり、追体験したりすることの大切さ
『みずたまり』

タクくんがブランコをこいでいる時です。
下にあった水たまりがどうしても気になり、のぞいてみました。
すると、映った自分の顔がだんだんと、津波でひとりぼっちになった女の子の顔に見えてくるのでした。

ポイント

しばらく前に、津波が起こった南の島で家族を失った女の子のことを、テレビで見たタクくん。

ところが、そのことをいつしか、すっかり忘れてしまっていました。

次の一文が絵本にあります。

「つなみにおどろいたタクでしたが、日がたつうちにそのおそろしさも、おんなのこのことも、わすれてしまっていました」

ここでは、記憶を風化させず、思い返すことの大事さが描かれているわけです。
また、一方で実際は体験したことのない出来事を自分が追体験することの大事さも描かれています。

記憶を呼び起こしたり、追体験したりを、読者に促そうとする内容です。

読書をすること自体が、記憶を呼びこしたり、追体験したりすることですが、この絵本のお話を読むだけで、おのずと、読書すること自体の大切さに気づくしかけになっています。

体験したことのない世界を知るための方法として、読書習慣を身に着けて、成長したいですね。
想像力の大切さを感じる一冊です。

2月の一冊

『あらしのよるに』
木村裕一/文 あべ弘士/絵
講談社 1,100円 1994年初版
テーマ
思いやり
読後感
ドキドキ・ワクワク・じーんとする
絵のタッチ
躍動感がある
データ
シリーズ350万部のベストセラー

著者が語る!シリーズ350万部『あらしのよるに』秘話
『あらしのよるに』

オオカミとヤギがひょんな事から相手の正体を知らないまま友だちになる『あらしのよるに』

ポイント

著者の木村裕一さんは講演会でこんなことを語っていました。
「物語を料理にたとえるなら、子ども本人がおいしいと思い、親はわが子とって栄養があると思えるものを書きたい」

こんなふうに語っていました。

「それには人間への興味につながるものが良い」

『あらしのよるに』は、オオカミとヤギは友だちだけれど、いつか食べられてしまうのでは?
こんな気持ちでハラハラしながら、ページをめくる手が止まりません。
ラストもこの後はどうしたんだろう?
そう想像させます。
これがシリーズ7巻続けて楽しめます。
シリーズの最後は大人も泣けるストーリーなっています。

木村さんの著作には大人向けに『きむら式 童話のつくり方』(講談社現代新書)があります。
その中でこの『あらしのよるに』シリーズについて、次のように言及している部分があります。


「あらしによるに」で非常におもしろかったのは「その後の話」というのが、読者からいっぱい(手紙で)来たこと。

「一からお話を書いてください」と言ったら書けないかもしれない。
けれども、その話を夢中になって読んでから、続きを書けと言われたら、すぐに頭の中でいろいろ想像ができて、書けない子もかけちゃった、ということもあるだろう。

本を読む良さというは単に読んで終わりということでなく、その後の話を想像する楽しみもあります。

お子さんに、お話の続きがどうなったと思う?
こんなふうに、ぜひ聞いてみてください。

1月の一冊

『くいしんぼうのはなこさん』
石井桃子/作 中谷千代子/絵
1,210円 1965年初版
テーマ
子どもの願望
読後感
ユーモラス、どきどき
絵のタッチ
あたたかさぬくもりを感じる。

正月太り、そんなの関係ない!?
『くいしんぼうのはなこさん』

食べものは好き嫌いばかりの、わがままな子牛のはなこさん。
そんなわがままが元で、ある日、はなこさんは大変な目にあいます。
はなこさんは、みんなの分のお芋とカボチャを、ひとやま丸々食べてしまうのです。
体はバルーンのようになってしまい苦しむのです。
みんなが嫌いな、あることをして何とか助かるのでした。

ポイント

のんびりとした牧場。
ユーモラスな子牛の表情。
ふんわりとして、あたたかな絵で表現されています。

絵を見ていると、はなこさんのわがままも憎めなくなりそうです。
お話は「こんな、わがままのしたい放題をやってみたい」という夢を見せてくれます。
最後は、こらしめられる昔話風のお話も、落ち着いて読める理由です。
憎めないはなこさんに会ってみたくなります。