読書から国語力を育てることばの学校【今月の一冊】

今月のこの一冊

ことばの学校とっておきの
ラインナップの
1冊を紹介します!

11月の一冊

『すすめ!ドクきのこ団』
村上しいこ/作 中川洋典/絵 
1,320円 2011年初版
テーマ
自己変革
読後感
ハッとする
絵のタッチ
線が太い

カツ丼やラーメンには愛がある!
『すすめ!ドクきのこ団』

小4のたつしがひきいるドクきのこ団という「いたずらグループ」があります。
ところが、そのドクきのこ団、今まさに解散の危機なのです。
そんな中、たつしはクラスメイトの愛里ちゃんを好きになるのですが、仲良くできず、愛里ちゃんにいたずらばかりしてしまうのです。
相談したお兄ちゃんからは相手のことをよく考えたり、見ていたりしないからだと、指摘されてしまいます。
そのことをきっかけに、たつしはドクきのこ団の解散危機の原因が、一人よがりな自分にあるのだと気づくのでした。

ポイント

お兄ちゃんのアルバイト先の食堂で、お客さんの気持ちを察しながら、接客対応することを覚えたたつし。
こうして愛里ちゃんやドクきのこ団の仲間たちの気持ちを考え始めるようになるのです。

要所要所で、カツ丼やラーメンを作っていっしょに食べる話が出てきます。
人と人が心を通わせる機会として、いっしょに食事する場面を描いています。
気負いなく、さらりと描かれる様子が余計にあったかく、しみじみとします。

10月の一冊

『わくわく森のむーかみ』
村上しいこ/作 宮地彩/絵 
1540円 2011年初版
テーマ
純真さ・誠実さ
読後感
ほんわか・あたたかい
絵のタッチ
ユーモラス・あたたかい

大人を改心させる子ども現る!
『わくわく森のむーかみ』

郵便局で働くお父さんを手伝う心やさしいくまの子むーかみ。
泥棒をしているきつねのぷっぷをいつの間にかに改心させると、今度はぷっぷと一緒にほかの大人たちの手助けも始めます。

ポイント

まっすぐな気持ちを持つくまの子むーかみは、すさんだ気持ちを持った大人たちの心を開かせることができる存在です。大人も弱いところを見せてもよく、まず自分の気持ちにまっすぐに生きればいいんだと気づかせてくれます。大人はもっと素直になればいいんだよと言われている気がしてきて、子どもが読んでも面白く、大人が読むと元気になれる絵本です。

9月の一冊

『蜘蛛の糸』
芥川龍之介/作 遠山繁年/絵
1,760円 1918年発表 偕成社
テーマ
エゴイズム
読後感
あっけない
絵のタッチ
大胆

糸をよじ登り地獄から抜け出したい!
『蜘蛛の糸』

おしゃかさまが散歩しています。
すると、はるか下の地獄にカンダタという大泥棒の男がもがき苦しんでいるのが見えます。
おしゃかさまは生前ひとつだけ良いことをしたこのカンダタをあわれんで、地獄へくもの糸をたらして救い出してやろうとするのでした。

ポイント

今回は、新たにことばの学校のラインアップに加わった中から1冊ご紹介します。
このお話の主人公は、いったい誰でしょうか。
カンダタに目がどうしても行ってしまいますが、もっと引いたところから、このお話全体を見てみてください。
おしゃか様は、なぜカンダタ以外の罪人は救おうしないのでしょうか。
おしゃか様が、どのように書かれているのかに注意して、改めて読んでみてください。
芥川龍之介は「自己中心は良くない」と、カンダタを指摘したいのでしょうか。
その視線を、ここに書かれている、おしゃか様にも向けてみてください。
芥川の張りめぐらした糸に気づくはずです。

8月の一冊

『うきわねこ』
蜂飼耳/作 牧野千穂/絵
1,512円 2011年初版 ブロンズ新社
テーマ
秘密のできごと
読後感
宙に浮いたような心地
絵のタッチ
柔らかいのに厚みがある

うきわを使って飛んでいきたいよ!
『うきわねこ』

おじいちゃんからえびおに、お誕生日プレゼントが届きました。
それは、うき輪の贈り物でした。
プレゼントには「満月の夜までしまって置くように」という手紙がいっしょに入っていました。
約束を守って、満月の夜にえびおがうき輪をつけてみると不思議なことが起こるのでした。

ポイント

えびおが、うき輪をつけると、なんとうき輪ごと空に浮かび上がることができたのです。
空の上では同じように、うき輪をつけたおじいちゃんが待っているではありませんか。
こうして、おじいちゃんとえびおは、秘密の夜のおでかけをすることになります。
楽しかった夜の空中散歩はおじいちゃんに秘密にしておくように言われます。
2人だけの秘密の共有、それは少しだけ大人になるということなのでしょう。

7月の一冊

『おれさまはようかいやで』
あんずゆき/作 あおきひろえ/絵
1650円 2015年初版
テーマ
友だち
読後感
わくわく
絵のタッチ
わかりやすい ポップ 緑色をたくさんつかう

ようかいと流れ星のふしぎなコンビ
『おれさまはようかいやで』

主人公は自分のことを「おれさま」と呼び、口を開けると関西弁でしゃべり出すようかいです。
あるとき、地上に落っこちた流れ星を見つけます。
当初「あやしいのは おれさまだけで じゅうぶんや」と流れ星を非難するようかいでしたが、「たすけてー!」「おねがーい!」と流れ星に言われると、見捨てられません。
こうして頼られるうちに、ようかいの気持ちが変わっていきます。
ようかいは、慣れないながらも流れ星を夜空へ戻すために力を貸すのでした。

ポイント

ようかいの中で流れ星の存在がどんどん大きくなっていきます。
それまで一人ぼっちで生きてきたようかいですが、流れ星と別れた後は、別れを惜しんでいました。
そんなセンチメンタルな自分につっこみを入れる様子が、ユーモラスでいながら切なく、心に染みます。

6月の一冊

『ちいさなねこ』
石井桃子/作 横内襄/絵
1967年初版990円
テーマ
猫の視点
読後感
はらはらしたけれど、ほっとした。
絵のタッチ
リアルな描写とシンプルな色使い

ちいさなねこの目で見たらびっくり!
『ちいさなねこ』

お外に出てお散歩したいですね。
ねこの目線になったらどんなふうに世界が見えているかと思って、お散歩すると面白いかもしれませんよ。
ちいさなねこが母猫の目を盗んで外に出て行ってしまい、車や犬など危険をかいくぐっていきます。

ポイント

自分と違う別の視点から世界が見えたらどんな感じでしょう?
この絵本は猫って世界がこんなにふうに見えているんだと、とても実感がわきます。
車が走れば、車輪がほんの目の前を過ぎていくスリリングさが表現されています。
猫ならではのすばしっこい動きも紙面を大胆に使って表しています。
本を閉じるときには満足感でいっぱいです。

5月の一冊

『おばあさんのひこうき』
佐藤さとる/作 村上勉/絵
1973年初版 1,650円
テーマ
家族
読後感
わくわくする
絵のタッチ
素朴

空を飛んで、おばあちゃんが会いに来てくれます!
『おばあさんのひこうき』

編み物上手な一人暮らしのおばあさん。
チョウの羽をじっくり観察して、その模様通りに編み物を作ったら、
なんと、ふわりふわりと、その編み物が浮き出したのでした。

おばあさんは、飛行機を編んで作ることにしました。
孫が住む港の町まで、それに乗って空の旅をするためです。

ポイント

お話の始まりは淡々としています。
編み物好きのおばあさんといっしょに、
ゆったりした生活を楽しんでいる気分になれます。

そんな生活に、突如、事件が起こります。
編んでいる編み物が宙に浮き始めるのです。
不思議なできごとが起こり、お話に変化が生まれて、
面白さを、さらに感じるところです。

その後、編み物に乗って夜空を旅するおばあさん。
ところが、この旅が終わると、
おばあさんは大好きな編み物をしなくなってしまいます。

今までずっと孫家族と同居することを断り続け、
一人暮らしをしていたのですが、
この旅をきっかけに孫のいる港の町へ移り住むことを決意します。

その理由は特に物語には描かれてはいません。

なぜ、おばあさんは大好きな編み物をやめてしまったのか。
一人暮らしを止めて、同居を決意するのか。

なぜなんだろうと想像してみましょう。

自分だけの編み物の世界から、孫との同居に踏み出す
変化を受け入れる様子が、そこに描かれています。

変化を受け入れること。
自分にとって本当に大切なものは何なのかを考えること。

このおばあさんにとって、この「心の旅」は必要だったのです。

みなさんにとって、今本当に必要な変化とは何でしょう。
そんな問いかけを秘めた物語です。

4月の一冊

『ぼくはおばけのおにいちゃん』
あまんきみこ/作 武田美穂/絵
教育画劇 1,100円 2005年初版
テーマ
友だち
読後感
わくわくする
絵のタッチ
輪かく線が太く、はっきりしてわかりやすい

留守番してたら、おばけが来た!
『ぼくはおばけのおにいちゃん』

留守番する幼い兄妹が夜になる心細さを感じています。
唐突におばけが窓からやって来て二人と一緒に夜空をかけめぐります。

ポイント

先日、お子さんに「もう5回読んだよ!」と言われた本をご紹介します。

おばけとの交流というと、ありがちな設定という印象を持つのは大人の側の視点です。
子どもが何度も読み返したくなるほどの魅力は、どこにあるのでしょうか。

まず、大人には単純に感じるストーリーです。
しかし、それが子どもには絵本の絵を見るための余裕を持たせているのです。

星空の絵が、見開きいっぱいに広がります。
おばけが紙面を縦横無尽に飛び回ります。
とても躍動感を感じるページ構成です。

また、ことばにも着目してみましょう。

「ひゅうひゅうひゅう」
「おーい、おーい、おーい」

このように繰り返しが多用されています。
思わず声に出したくなります。

単純明快なストーリー、言葉の繰り返しという、子どもを絵本の世界に引き込む仕かけがそろっているのです。

ぜひ、手に取ってご一緒に朗読してみてください。

3月の一冊

『みずたまり』
森山京/作  松成真理子/絵
1,100円  2011年初版
テーマ
想像力
読後感
じんとくる
絵のタッチ
やわらかい

思い出したり、追体験したりすることの大切さ
『みずたまり』

タクくんがブランコをこいでいる時です。
下にあった水たまりがどうしても気になり、のぞいてみました。
すると、映った自分の顔がだんだんと、津波でひとりぼっちになった女の子の顔に見えてくるのでした。

ポイント

しばらく前に、津波が起こった南の島で家族を失った女の子のことを、テレビで見たタクくん。

ところが、そのことをいつしか、すっかり忘れてしまっていました。

次の一文が絵本にあります。

「つなみにおどろいたタクでしたが、日がたつうちにそのおそろしさも、おんなのこのことも、わすれてしまっていました」

ここでは、記憶を風化させず、思い返すことの大事さが描かれているわけです。
また、一方で実際は体験したことのない出来事を自分が追体験することの大事さも描かれています。

記憶を呼び起こしたり、追体験したりを、読者に促そうとする内容です。

読書をすること自体が、記憶を呼びこしたり、追体験したりすることですが、この絵本のお話を読むだけで、おのずと、読書すること自体の大切さに気づくしかけになっています。

体験したことのない世界を知るための方法として、読書習慣を身に着けて、成長したいですね。
想像力の大切さを感じる一冊です。

2月の一冊

『あらしのよるに』
木村裕一/文 あべ弘士/絵
講談社 1,100円 1994年初版
テーマ
思いやり
読後感
ドキドキ・ワクワク・じーんとする
絵のタッチ
躍動感がある
データ
シリーズ350万部のベストセラー

著者が語る!シリーズ350万部『あらしのよるに』秘話
『あらしのよるに』

オオカミとヤギがひょんな事から相手の正体を知らないまま友だちになる『あらしのよるに』

ポイント

著者の木村裕一さんは講演会でこんなことを語っていました。
「物語を料理にたとえるなら、子ども本人がおいしいと思い、親はわが子とって栄養があると思えるものを書きたい」

こんなふうに語っていました。

「それには人間への興味につながるものが良い」

『あらしのよるに』は、オオカミとヤギは友だちだけれど、いつか食べられてしまうのでは?
こんな気持ちでハラハラしながら、ページをめくる手が止まりません。
ラストもこの後はどうしたんだろう?
そう想像させます。
これがシリーズ7巻続けて楽しめます。
シリーズの最後は大人も泣けるストーリーなっています。

木村さんの著作には大人向けに『きむら式 童話のつくり方』(講談社現代新書)があります。
その中でこの『あらしのよるに』シリーズについて、次のように言及している部分があります。


「あらしによるに」で非常におもしろかったのは「その後の話」というのが、読者からいっぱい(手紙で)来たこと。

「一からお話を書いてください」と言ったら書けないかもしれない。
けれども、その話を夢中になって読んでから、続きを書けと言われたら、すぐに頭の中でいろいろ想像ができて、書けない子もかけちゃった、ということもあるだろう。

本を読む良さというは単に読んで終わりということでなく、その後の話を想像する楽しみもあります。

お子さんに、お話の続きがどうなったと思う?
こんなふうに、ぜひ聞いてみてください。

1月の一冊

『くいしんぼうのはなこさん』
石井桃子/作 中谷千代子/絵
1,210円 1965年初版
テーマ
子どもの願望
読後感
ユーモラス、どきどき
絵のタッチ
あたたかさぬくもりを感じる。

正月太り、そんなの関係ない!?
『くいしんぼうのはなこさん』

食べものは好き嫌いばかりの、わがままな子牛のはなこさん。
そんなわがままが元で、ある日、はなこさんは大変な目にあいます。
はなこさんは、みんなの分のお芋とカボチャを、ひとやま丸々食べてしまうのです。
体はバルーンのようになってしまい苦しむのです。
みんなが嫌いな、あることをして何とか助かるのでした。

ポイント

のんびりとした牧場。
ユーモラスな子牛の表情。
ふんわりとして、あたたかな絵で表現されています。

絵を見ていると、はなこさんのわがままも憎めなくなりそうです。
お話は「こんな、わがままのしたい放題をやってみたい」という夢を見せてくれます。
最後は、こらしめられる昔話風のお話も、落ち着いて読める理由です。
憎めないはなこさんに会ってみたくなります。