読書から国語力を育てることばの学校【今月の一冊】

今月のこの一冊

ことばの学校とっておきの
ラインナップの
1冊を紹介します!

11月の一冊

『すすめ!ドクきのこ団』
村上しいこ/作 中川洋典/絵 
1,296円 2011年初版
テーマ
自己変革
読後感
ハッとする
絵のタッチ
線が太い

カツ丼やラーメンには愛がある!
『すすめ!ドクきのこ団』

小学4年生のたつしが名前をつけた「ドクきのこ団」といういたずらグループ。
実は今、解散の危機にあります。
そんな中、たつしはクラスメイトの愛里ちゃんを好きになるのです。
けれども、仲良くすることができず、愛里ちゃんにいたずらばかりしてしまうのです。
相談相手のお兄ちゃんからは、ちゃんと相手のことを見ていないからだと指摘されるのでした。
そのことがきっかけで、たつしは自分が「ドクきのこ団」の解散危機の原因だと気づくのです。ひとりよがりな、自分にようやく気づくのでした。

ポイント

お兄ちゃんのアルバイト先の食堂で、お客さんの気持ちを察しながら、応対することをたつしは覚えたのでした。
愛里ちゃんや「ドクきのこ団」の仲間たちの気持ちを考え始めるようになります。

要所で、みんなでカツ丼やラーメンをつくっていっしょに食べるという場面が出てきます。
人と人が心を通わせる機会として、いっしょに食事する場面を描いているのです。
さらりと描かれて余韻が残り、余計にあったかみがあります。
しみじみとしてきます。

10月の一冊

『ねずみのいもほり』
山下明生/作 いわむらかずお/絵  ひさかたチャイルド
864円 1984年初版
テーマ
お父さんのアイデア道具
読後感
楽しそう
絵のタッチ
愛らしい、柔らかい

お父さんが作る魔法の道具
『ねずみのいもほり』

芋ほり大会にねずみの7つ子が挑戦です。
お父さんがこの日のために芋ほり用のスコップを作ってくれました。
そのスコップはとっても便利なのです。
大会がある畑まで出かけるためのソリになったり、でんしゃになったり、ケーブルカーになったりできます。
楽しいお出かけになりました。

ポイント

帰り道も、あるものが、ねずみのお父さんのアイデアで乗り物に早変わりします。
このお話のキーマンはなんと言ってもアイデアマンのお父さん。
お父さんの手製の道具で、7つ子が過ごす時間が魔法のように変わるのです。
お父さんが作ってくれた道具や、おもちゃって、それだけで子どもにとっては、このお話のように特別な魅力があるものですね。何かを作ってもらったり、作ったりするとうれしくなりますね。

9月の一冊

『なぜ?どうして?科学のお話5年生』
大山光晴/監修・小林峰子/絵
2010年初版
テーマ
科学で疑問を解き明かすこと
読後感
なるほど!
絵のタッチ
マンガのキャラクターのようで親しみやすい

月はどうやってできたの?
『なぜ?どうして?科学のお話5年生』

お月見の季節ですね。
ところで、お月さまがどうやってできたのか。
皆さん知っていますか?
ずっと昔から身近に親しまれている星なのに、あまり考えたことないですよね。
この本にはこんなふうに書かれていましたよ。

月がどのようにできたかは、実は、いまだに、はっきり分かっていないそうです。
いくつか説がある中で、最も有力なのが「ジャイアント・インパクト説」。
地球に大きな星がぶつかり、はじかれた岩のかけらが月になったという説です。

他にも地球の一部が分裂した「分裂説」。
地球と同時に誕生した「ふたご説」。
地球の引力に引きつけられたという「捕獲説」などがあるそうです。

ポイント

AI時代を生きる子どもたちには、科学的な知識やスキルはとても重要ですね。
ぜひ科学への興味、関心を早くから持ってもらいたいものですね。

この本では、他にも「どうしてテレビはうつるの?」「カメのこうらの中はどうなっているの?」「筋肉痛はどうして起きるの?」など、大人も知りたい素朴な科学の疑問がイラスト付きで46話も入っています。

8月の一冊

『宿題ひきうけ会社』
古田足日/作 長野ヒデ子/絵
1,296円 1966年初版
テーマ
社会風刺
読後感
はっとする
絵のタッチ
太い筆致 めぢからがある

夏休みの宿題は労働問題!?
『宿題ひきうけ会社』

宿題を本人のかわりにやってくれる会社。
「そんな会社があったらいいなあ」と会社を作ったのはサクラ小学校の5年生たちです。
宿題ひきうけ会社の仕事は「宿題をやる係」と宿題をやってほしいというお客さんの「注文を取って歩く係」に分かれています。
どちらもなかなか大変な仕事なのです。

あるとき、ひょんなことから学校の学級会で会社の存在を先生に知られてしまいます。
先生から会社の解散を命じられてしまうのでした。

ポイント

お話の展開はその後、宿題を学校から与えられる仕事ととらえることで、大人社会の労働問題とつなげて語られていきます。
競争原理で成り立つ「社会」とはいったい何なんだろうという大きなテーマに切り込んでいきます。

7月の一冊

『ずるやすみにかんぱい!』
宮川ひろ/作 小泉るみ子/絵
童心社 1188円 2009年初版
テーマ
思いやり 自然にふれる
読後感
山に行ってリフレッシュしたい!
絵のタッチ
顔の表情が豊か

ずるやすみは、わるくない!?
『ずるやすみにかんぱい!』

学校でみんなから意地悪をされている雄介くん。
お父さんは、雄介くんにずる休みをしてリフレッシュすることをすすめます。
そして、お父さんと一緒に山が見える町に出かけることにしました。
雄介くんは自然と、そこで出会った人たちの温かみにふれて、元気を取り戻すのでした。

ポイント

雄介くんは山の見える町で出会った人たちから、次々にうち明け話を聞くのです。
みんなも、実は人間関係になやんで「ずるやすみ」をしたことがあるというのです。
雄介くんはみんなの経験談を聞いて、逆に励ましの言葉をかけるほど心に余裕が生まれます。そして、雄介くんが自分たちで作った川原の露天風呂で大きな声をあげて心を開放するシーンは読み手も元気をもらえます。

6月の一冊

『くいしんぼうのはなこさん』
石井桃子/作 中谷千代子/絵
1,188円 1965年初版
テーマ
わがままはよくない!
読後感
ユーモラス、どきどき
絵のタッチ
あたたかさぬくもりを感じる。

わがままばかりじゃいられない!
『くいしんぼうのはなこさん』

生まれた時からずっと食べるものに好き嫌いがある子牛のはなこさん。
わがままをして育ったはなこさんも、子牛たちがたくさん集まる牧場に入れば、少しは性格が直るのかと思っていたら、やっぱり、いばってばかりです。
ところが、そんなわがままが原因で、ある日はなこさんに災難が訪れるのでした。
はなこさんは、みんなの分も考えず、おいもも、かぼちゃもひとやまを丸々食べてしまいます。体がバルーンのようになってしまい、お腹が痛くなってしまったはなこさんは果たしてどうなるのか。

ポイント

のんびりした牧場の風景と、ユーモラスな子牛の表情がふんわりとして、あたたかな雰囲気です。お話は「こんなわがままできたらいいなあ」という一種の幻想を見せてくれます。
昔話を読んだ時のような大らかさがあり、それが長く愛されてきた理由かもしれません。

5月の一冊

『キャベツくん』
長新太/作・/絵
1,404円 1980年初版
テーマ
ふれあい
読後感
ほのぼの
絵のタッチ
明るい

ぼくをたべると、こうなる!
『キャベツくん』

腹がすいたブタヤマさんは、キャベツくんのことを食べたくなってしまいます。
「ぼくをたべると、キャベツになるよ!」というと、キャベツになったブタヤマさんの様子が空にぽっかり浮かびあがりました。
その後、キャベツを食べてしまうと、動物がキャベツになってしまう様子が次々に空に描かれていきます。

ポイント

絵本をめくるたび、次にはどんなふうに動物がキャベツに変わっているのだろうかと、わくわくします。
そして、めくってみると、その絵の不思議な魅力に見入ってしまいます。
ストーリーを読み取るのではない、この本ならではの不思議な気持ちになるための絵本です。

4月の一冊

『999ひきのきょうだいのはるですよ』
木村研/作 村上康成/絵
1,296円  2009年初版
テーマ
春の訪れ、冬眠
読後感
わくわく
絵のタッチ
まるいキャラクター

春に読みたい本
『999ひきのきょうだいのはるですよ』

冬眠から目覚めた999匹のカエルの兄弟たち。
桜が満開なのに、他の生き物たちはまだ冬眠したままです。
そこで、999匹は起こしてまわろうと考えます。

ポイント

冬を乗り切るために冬眠する生き物たち。
春の訪れに気づかずに毎年、桜を見られずにいるカメさんも999匹のおかげで今年は満開の桜が見られました。
その後も次々と、おねぼうさんを探してはカエルたちは起こしにかかります。
そのたびに、寝場所からいったい誰が出てくるのかと、どきどきします。
知らずに、こわーい、あの生き物も起こしてしまうのです。
冬眠と春の訪れを巧みに扱った作品です。
ぜひ、この本を読んで、お花見に出かけて、花だけではなく、生き物たちも観察してみてくださいね。

3月の一冊

『赤毛のアン』
L.M.モンゴメリ/作 村岡花子/訳 HACCAN/絵
713円 1908年初版
テーマ
成長
読後感
わくわく
絵のタッチ
現代的・かわいらしい

個性的な少女と美しい四季の物語
『赤毛のアン』

孤児のアンはマシュウおじさんとマリラおばさんの家へ引き取られます。
そして、おじさん、おばさんや学校で出会う友人たちとの交流を通して、アンが自分を見つめ、生きる喜びを感じる瞬間、瞬間が描かれていきます。

ポイント

風変りな少女という印象のアンが主人公です。
人の話を聞き入れられず、自分の話ばかりするような、少し困った人なのです。
ところが、読み進めていくと、アンの個性として、その違和感はむしろプラスに変わります。
生き生きとした人間性が魅力的に感じるようになります。
アンを引き取ったマシュウやマリラがそうなったように、アンの想像力あふれる話を続けてもっと聞きたくなってしまいます。

たぐいまれな想像力と純粋な(まっすぐで、それだから失敗もする)性格の持ち主・アンの成長がカナダのプリンスエドワード島の美しい四季を背景に絵物語のように語られます。

2月の一冊

『きつねのかみさま』
あまんきみこ/作 酒井駒子/絵 
ポプラ社 1188円 2005年初版
テーマ
思いやり
読後感
ほのぼの
絵のタッチ
繊細

きつねも、なわとびがしてみたい!
『きつねのかみさま』

姉と弟の二人は、なわとびのひもを公園に忘れてしまい、取りに戻りました。
すると、そこではきつねの子どもたちが忘れ物のなわとびを使ってみんなで遊んでいるのでした。

ポイント

筆者・絵本画家ともに人気・実力のある2人です。
だからでしょうか。
ストーリーの運びに気負うところがなく、きつねと人が話したり、いっしょに遊びだしたりしても違和感がありません。
いつの間にかに、読者は、すっと、絵本の世界へ誘い込まれているのです。
しかし、お話はファンタジーであることを生かすというよりは、登場人物たちの感情にていねいに寄りそい、気持ちを表現することを大切にします。
そのため、読後は、おおらかな気持ちになります。
ただ、昔話のおおらかさとは、また違った現代的なきめの細かいベールに包まれているような印象です。
最後には読者へ贈り物のような一言が待っています。
それが何かは読んでみてからのお楽しみです。

1月の一冊

『にげだしたライオン』
ゲーテ/作 田名網敬一/絵 
1,512円 1827年完成
テーマ
気持ちが大事
読後感
じーんとする
絵のタッチ
鮮やか色

文豪ゲーテが書いた童話
『にげだしたライオン』

火事になったサーカスから動物たちが逃げ出します。
ゾウやクマはすぐに見つかりました。ところがライオンの行方だけが分かりません。やっとのことでライオンが山の上の木の下に隠れているのを探し出したのですが、こんどは猛獣使いがむちを打って追い立てようとしてもライオンは言うことを聞ききません。やりを抱えて馬に乗った若者や、猟犬を従えた猟師が来ても野生に返ってしまった様子のライオンは牙をむいてびくともしません。いよいよ兵隊が取り囲み、ついに撃ってしまおうとしました。

ポイント

ライオンが撃たれようとしたその時、ひとりの少年がやってきてあることをしました。
そうすると、それまでとは一変してライオンはおとなしくなったのでした。
相手がどんな気持ちでいるのか。寄り添ってみることが大切だと示してくれるお話です。