読書から国語力を育てることばの学校【今月の一冊】

今月のこの一冊

ことばの学校とっておきの
ラインナップの
1冊を紹介します!

6月の一冊

『ずるやすみにかんぱい!』
宮川ひろ/作 小泉るみ子/絵
童心社 1,188円 2009年初版
テーマ
思いやり 自然にふれる
読後感
山に行ってリフレッシュしたい!
絵のタッチ
顔の表情が豊か

『ずるやすみにかんぱい!』

学校でいじわるをされている雄介。
ここは思い切って、ずるやすみをしてリフレッシュしようと、お父さんは雄介といっしょに山の見える町に出かけることにしました。
雄介は大自然にふれ、そして人のあたたかみにもふれて、だんだんと元気を取り戻します。

ポイント

雄介は山の見える町で会った人たちから、こんな打ち明け話を聞くのでした。
実は自分も人間関係に悩んだことがあり、ずるやすみをしたことがあるというのです。
雄介はみんなの話を聞くうちに、打ち明け話をする人へ励ましの言葉をかけられるほどまで心に余裕が生まれてくるのでした。
元気を取り戻した雄介が自分たちで作った川原の露天風呂で大声をあげる場面。
読んでいて元気をもらえます。

5月の一冊

『ハッピーノート』
草野たき/作 ともこエヴァーソン/絵
715円 2005年初版
テーマ
自分に素直になること
読後感
自分も変わらなきゃ!
絵のタッチ
こまやか、あたたかい

自分を変えるきっかけとは?
『ハッピーノート』

小学6年生の聡子(さとこ)は中学受験の塾に通っています。
学校での聡子は友だちグループたちに実はうんざりしています。
でも、ホンネをかくしてつき合っています。
塾ではそんな人間関係を気にすることがなく、勉強に打ち込んでさえいればいいと思っています。

そんな聡子には秘密があるのでした。
塾の帰りに立ちよるドーナツショップで、同じ塾のボーイフレンドの霧島(きりしま)くんと待ち合わせて、いっしょに勉強しているのです。
霧島くんは塾では声をかけてくれないけれど、ドーナツショップではとてもやさしくしてくれるのです。
そんな霧島くんにも聡子はホンネをかくしています。
「塾でも霧島くんに仲よくしてほしい」「友だちの輪に入れてほしい」というホンネです。

聡子はホンネを言えない自分のいらいらを家では両親にぶつけてしまっています。
ところが、ある日、デパートの試食販売の仕事を始めたお母さんをこっそり見に行ってから、聡子の内面は変わり始めます。
大きな声を出すのが苦手なはずのお母さんが声をはりあげて、元気に仕事をしている様子を見て、自分も変わろう、本心を言えるようにと思うのでした。

ポイント

心理学で「アサーション(主張)」という考え方があります。
思っていることをためこんで言えなかったり、がまんしてしまったりするタイプの人が相手の気持ちを考えながらも、自分の気持ちや主張を受け入れられるように表現していく取り組みです。
「ハッピーノート」はまさに、このアサーションの過程が描かれている物語でした。

4月の一冊

『なぞの転校生』
眉村卓/作 れい亜/絵
825円 1967年初版
テーマ
成長・SF(サイエンス・フィクション)
読後感
不思議?でも感動!
絵のタッチ
淡い

『なぞの転校生』

広一の中学校に転校生がやって来ます。
美形で秀才、スポーツ万能の好青年の典夫です。
この転校生の典夫、異様な行動を見せ始めるのです。

雨を怖がったり、運動会のリレーの本番の最中なのにジェット機が上を通過すると、コースをそれて、突然、校庭から逃げ出したりします。

それも典夫だけでなく、典夫と一緒の日に転校してきた美形で秀才、スポーツ万能の他の4人の生徒もリレーの最中にもかかわらず、逃げ出してしまうのです。

いったいこれはどうしたのかと騒然となっていると、新聞の記事に突如このような謎の天才少年少女が現れていることがわかるのです。
そんな謎の天才少年少女たちは典夫が転校して来たのと同じタイミングで他の町にも次々やってきていたようなのです。

それから様々な事件が次々と起こるのです。

ポイント

こちらの作品、何度か実写化もされています。

・学園もの
・クライシス(危機)
・恋愛

ストーリーの面白さに共通するこのようポイントが散りばめられつつ、物語は壮大に展開していきます。
後は読んでのお楽しみ。

クラスに転校生がやって来たドキドキから生まれた物語です。

3月の一冊

『さくら子のたんじょう日』
宮川ひろ/作 こみねゆら/絵
1,430円 2004年初版
テーマ
家族・アイデンティティ・感謝
読後感
じーんとする
絵のタッチ
お人形のよう

生まれてきてよかった!
『さくら子のたんじょう日』

さくら子はお母さんといっしょに自分の名前の由来になったさくらの木を訪ねます。その木は栗の大木が折れて、その先端からさくらの木が自然についだみたいにはえている木でした。この木は、くりの木がさくらの子を身ごもったような様子なので『みごも栗』と呼ばれていました。お母さんは子どもをさずかり、みごもるようにこの木にお願いしたのだそうです。
こうしてお母さんがお願いしてさずかったのがさくら子なのです。そんなさくら子には小さいときから自分の出生について気になっていることがありました。そのことをお母さんに聞いてみようと思いながらなかなか聞くことができないまま小学6年生になりました。さくら子は自分から『みごも栗』を見に行こうとお母さんを誘います。そうして、花の下でおべんとうを二人で食べ終わるとお母さんは打ち明け話を始めるのでした。

ポイント

自分とはいったい何なんだろうという思春期の自意識の芽生えをえがき、生まれてきたことに感謝する気持ちであふれている作品です。

2月の一冊

『小学五年生』
重松清/作 唐仁原教久/絵
1,540円 2007年初版
テーマ
友情・家族・成長
読後感
胸がいっぱいになる
絵のタッチ
素朴

中学入試頻出作品!
『小学五年生』

17編の短編小説集です。
主人公は小学五年生の男の子たち。
クラスメイトの転校や近しい人の死、ほのかな恋心、ケンカと友情。
「おとな」ではないが「子ども」でもない時期を四季を通して描く心を揺さぶる物語です。

ポイント

中学入試に引っぱりだこの作品です。
大人向けの本格小説で構成やテーマがしっかりしていて読み応えがあります。
その一方で主人公が小学生のため、子どもが読んで感情移入がしやすいのです。
中学入試では設問ごとに作品の構成やテーマの理解度が問われるわけですが、この小説、登場人物の行動や言動、情景描写などから気持ちの変化をくみ取って読む必要がある場面が巧みに描き込まれて出題の宝庫です。
入試に良く出る理由もうなずける納得の一冊です。

1月の一冊

『だいじょうぶ だいじょうぶ』
いとうひろし/作・絵
1,080円 1995年初版
テーマ
信頼
読後感
「だいじょうぶ だいじょうぶ」と声に出したくなる
絵のタッチ
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世界はすてきでちょっとこわい。でも大丈夫!
『だいじょうぶ だいじょうぶ』

「僕」はおじいちゃんと散歩に出かけるうちに世界のすばらしさやこわさを知ることになります。
何かあるたびごとにおじいちゃんは「だいじょうぶ だいじょうぶ」と声をかけて励ましてくれます。

ポイント

この絵本の最後は大きくなった主人公が病気でふせるおじいちゃんの手を今度は自分がにぎり「だいじょうぶ だいじょうぶ」と声をかける場面で終わります。
自分を励ましてくれた言葉を今度はおじいちゃんにかけるこの主人公はきっと他人に向かっても同じように行動が取れる人でしょう。
とてもこころ温まる一冊です。