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読書から国語力を育てることばの学校【今月の一冊】

2021年 今月のこの一冊

ことばの学校とっておきの
ラインナップの
1冊を紹介します!

12月の一冊

『赤毛のアン』
L.M.モンゴメリ/作 村岡花子/訳 HACCAN/絵
858円 1908年初版
テーマ
成長
読後感
わくわく
絵のタッチ
現代的・かわいらしい

個性的な少女と美しい四季の物語
『赤毛のアン』

孤児のアンは、マシュウおじさんとマリラおばさんの家へ引き取られます。
そして、おじさん、おばさんや学校で出会う友人たちとの交流を通して、アンが自分を見つめて、生きる喜びを感じる瞬間、瞬間が描かれていきます。

ポイント

風変りな印象の少女、アンが主人公です。
人の話が聞き入れられず、自分の話ばかりするような、少し困った女の子なのです。
ところが、読み進めていくとその違和感はアンの個性として、むしろプラスの印象に変わります。
生き生きした人間的な魅力として感じるようになるのです。
アンを引き取ったマシュウやマリラが、そうなったように、アンの想像力あふれる話を続けてもっと聞きたくなってしまうのです。

たぐいまれな想像力と純粋で、まっすぐで、それだから失敗もする性格の持ち主、アンの成長がカナダのプリンスエドワード島の美しい四季を背景に絵物語のように語られます。

11月の一冊

まいごになったぞう
寺村輝夫/作 村上勉/絵
1,100円 1989年初版
テーマ
純真・信頼・愛
読後感
渡る世間に鬼はなし
絵のタッチ
つぶらな瞳

こわいことなんてないんだよ みんなキミが好き
まいごになったぞう

ゾウの赤ちゃんが迷子になって泣いています。
キリン、カバ、ワニ、ライオンがそれぞれ子ゾウを心配して声をかけても、ただ「あばば うぶー」と子ゾウは言うばかりです。

ポイント

子ゾウは最後には母さんゾウの元へ帰ります。
しかし、それまでに子ゾウはいろんな動物たちに出会います。
でも、誰に会っても「あばば うぶー」だけで通してしまいます。
出会ったこわそうなカバは言いました。
「ワニに食べられちゃうよ」
そんなワニに会うと、今度はワニが「ライオンに食べられちゃうよ」と心配して声をかけます。
そんなに恐れられているライオンでさえ、子ゾウを見ると、かわいくなって食べはしません。
それぞれ違った動物たちは、仲良くないのかもしれないけれど、赤ちゃんゾウに対する愛はみんな持っているのです。
この世界は信頼できるところかもと、大らかで、ゆったりとした気持ちになれる作品です。

10月の一冊

『はっぱのおうち』
征矢清/作 林明子/絵
990円 1985年初版
テーマ
生き物・時間
読後感
ほのぼの
絵のタッチ
表現がこまやか

雨がふるのが待ち遠しくなる?
『はっぱのおうち』

さちちゃんは庭で1人、花を摘んでいました。
すると、ぽつりぽつりと雨がふってきました。
茂みのかくれがで雨やどりをするさちちゃん。

そこへ、同じように雨やどりをする仲間たちがやって来るのでした。

その仲間たちたちというのは、小さな昆虫たちです。

かまきり
もんしろちょう
こがねむし
てんとうむし……

ポイント

雨やどりは退屈なものですね。
けれど、この作品では友だちがたずねて来る楽しい時間として描いています。
一見、退屈な時間も楽しい時間に変えることができると示しています。
物事の見方やとらえ方を新しく教えてくれる一冊です。

9月の一冊

『思考の整理学』
外山滋比古/著
572円 1983年初版
テーマ
思考のアイデア集
読後感
なるほど!
絵のタッチ
-

東大・京大で1番読まれた本
『思考の整理学』

著者は文学作品の価値を次のように述べています。
このような独特の語り口や視点がおもしろく読める理由です。

「A読み(すでに知っていることの再認)をしていたのが、突如としてB読み(未知のことの理解)のできるようになるわけがない。移行の橋わたしがなくてはならない。それに役立つのが文学作品である。国語教育において、文学作品の読解が不可欠な理由がそこにある。」(「既知・未知」より)

ポイント

読書技術やアイデアを生み出す方法、情報の整理の仕方などの知的活動ついてのエッセイ集

出版から30年をかけて、100万部突破のロングセラーになった本です。
入試問題にもたくさん出ています。
2000年台になってから帯に以下の文面がついて、再び火がつきました。

・東大・京大で1番読まれた本
・もっと若い時に読んでいれば…そう思わずにはいられませんでした。

8月の一冊

『かいぞくポケット1 なぞのたから島』
寺村輝夫/作 永井郁子/絵
1,100円 1989年初版
テーマ
冒険
読後感
わくわくする
絵のタッチ
親しみやすい

うまくいえたら続きを読んでよろしい!?
『かいぞくポケット1 なぞのたから島』

仲間たちとのワクワクドキドキの宝さがしの大冒険がくりひろげられるお話です。

ポイント

ストーリーも面白いのですが、読者への投げかけがときどき書かれていて、そんなところも面白いです。
まず、最初のページ、次のように始まります。

「ポケット ケポット トッポケト うまくいえたら、よみはじめてよろしい」

子どもたちの中には声高らかにこの言葉を読み上げてからから読み始める子もいます。

お話の途中でも

「じゅもんを三かいとなえること。うまくいえた人だけが、つづきをよんでよろしい」

こんな文章が出てきて、子どもたちから「これ読むの?」と質問されたことがありました。

このような手法は、知らず知らずのうちに読者を物語に引き込みます。
こうした「語り」も、この作品の魅力の1つです!

7月の一冊

『ふたごの星』
宮澤賢治/作 あきやまただし/絵
1,100円 2005年初版
テーマ
友愛
読後感
宙に浮いているよう
絵のタッチ
ふしぎ、あわい色

天の川で大ゲンカ!!
『ふたごの星』

天の川にすむふたごの星がさそりの星に大からすの星がけんかをしたところを助けたり、ほうき星にさそわれて天の川を旅します。
大くじら、うみへび、海の王さまに出会います。

ポイント

作品の中に出てくる「星めぐりの歌」が有名です。
代表作の『銀河鉄道の夜』の作品内で、この『ふたごの星』の話をする場面が出てきます。
『銀河鉄道の夜』を手にして読んだとき、ぜひ、この『ふたごの星』のことを思い出してくださいね。

6月の一冊

『ずるやすみにかんぱい!』
宮川ひろ/作 小泉るみ子/絵
童心社 1,188円 2009年初版
テーマ
思いやり 自然にふれる
読後感
山に行ってリフレッシュしたい!
絵のタッチ
顔の表情が豊か

『ずるやすみにかんぱい!』

学校でいじわるをされている雄介。
ここは思い切って、ずるやすみをしてリフレッシュしようと、お父さんは雄介といっしょに山の見える町に出かけることにしました。
雄介は大自然にふれ、そして人のあたたかみにもふれて、だんだんと元気を取り戻します。

ポイント

雄介は山の見える町で会った人たちから、こんな打ち明け話を聞くのでした。
実は自分も人間関係に悩んだことがあり、ずるやすみをしたことがあるというのです。
雄介はみんなの話を聞くうちに、打ち明け話をする人へ励ましの言葉をかけられるほどまで心に余裕が生まれてくるのでした。
元気を取り戻した雄介が自分たちで作った川原の露天風呂で大声をあげる場面。
読んでいて元気をもらえます。

5月の一冊

『ハッピーノート』
草野たき/作 ともこエヴァーソン/絵
715円 2005年初版
テーマ
自分に素直になること
読後感
自分も変わらなきゃ!
絵のタッチ
こまやか、あたたかい

自分を変えるきっかけとは?
『ハッピーノート』

小学6年生の聡子(さとこ)は中学受験の塾に通っています。
学校での聡子は友だちグループたちに実はうんざりしています。
でも、ホンネをかくしてつき合っています。
塾ではそんな人間関係を気にすることがなく、勉強に打ち込んでさえいればいいと思っています。

そんな聡子には秘密があるのでした。
塾の帰りに立ちよるドーナツショップで、同じ塾のボーイフレンドの霧島(きりしま)くんと待ち合わせて、いっしょに勉強しているのです。
霧島くんは塾では声をかけてくれないけれど、ドーナツショップではとてもやさしくしてくれるのです。
そんな霧島くんにも聡子はホンネをかくしています。
「塾でも霧島くんに仲よくしてほしい」「友だちの輪に入れてほしい」というホンネです。

聡子はホンネを言えない自分のいらいらを家では両親にぶつけてしまっています。
ところが、ある日、デパートの試食販売の仕事を始めたお母さんをこっそり見に行ってから、聡子の内面は変わり始めます。
大きな声を出すのが苦手なはずのお母さんが声をはりあげて、元気に仕事をしている様子を見て、自分も変わろう、本心を言えるようにと思うのでした。

ポイント

心理学で「アサーション(主張)」という考え方があります。
思っていることをためこんで言えなかったり、がまんしてしまったりするタイプの人が相手の気持ちを考えながらも、自分の気持ちや主張を受け入れられるように表現していく取り組みです。
「ハッピーノート」はまさに、このアサーションの過程が描かれている物語でした。

4月の一冊

『なぞの転校生』
眉村卓/作 れい亜/絵
825円 1967年初版
テーマ
成長・SF(サイエンス・フィクション)
読後感
不思議?でも感動!
絵のタッチ
淡い

『なぞの転校生』

広一の中学校に転校生がやって来ます。
美形で秀才、スポーツ万能の好青年の典夫です。
この転校生の典夫、異様な行動を見せ始めるのです。

雨を怖がったり、運動会のリレーの本番の最中なのにジェット機が上を通過すると、コースをそれて、突然、校庭から逃げ出したりします。

それも典夫だけでなく、典夫と一緒の日に転校してきた美形で秀才、スポーツ万能の他の4人の生徒もリレーの最中にもかかわらず、逃げ出してしまうのです。

いったいこれはどうしたのかと騒然となっていると、新聞の記事に突如このような謎の天才少年少女が現れていることがわかるのです。
そんな謎の天才少年少女たちは典夫が転校して来たのと同じタイミングで他の町にも次々やってきていたようなのです。

それから様々な事件が次々と起こるのです。

ポイント

こちらの作品、何度か実写化もされています。

・学園もの
・クライシス(危機)
・恋愛

ストーリーの面白さに共通するこのようポイントが散りばめられつつ、物語は壮大に展開していきます。
後は読んでのお楽しみ。

クラスに転校生がやって来たドキドキから生まれた物語です。

3月の一冊

『さくら子のたんじょう日』
宮川ひろ/作 こみねゆら/絵
1,430円 2004年初版
テーマ
家族・アイデンティティ・感謝
読後感
じーんとする
絵のタッチ
お人形のよう

生まれてきてよかった!
『さくら子のたんじょう日』

さくら子はお母さんといっしょに自分の名前の由来になったさくらの木を訪ねます。その木は栗の大木が折れて、その先端からさくらの木が自然についだみたいにはえている木でした。この木は、くりの木がさくらの子を身ごもったような様子なので『みごも栗』と呼ばれていました。お母さんは子どもをさずかり、みごもるようにこの木にお願いしたのだそうです。
こうしてお母さんがお願いしてさずかったのがさくら子なのです。そんなさくら子には小さいときから自分の出生について気になっていることがありました。そのことをお母さんに聞いてみようと思いながらなかなか聞くことができないまま小学6年生になりました。さくら子は自分から『みごも栗』を見に行こうとお母さんを誘います。そうして、花の下でおべんとうを二人で食べ終わるとお母さんは打ち明け話を始めるのでした。

ポイント

自分とはいったい何なんだろうという思春期の自意識の芽生えをえがき、生まれてきたことに感謝する気持ちであふれている作品です。

2月の一冊

『小学五年生』
重松清/作 唐仁原教久/絵
1,540円 2007年初版
テーマ
友情・家族・成長
読後感
胸がいっぱいになる
絵のタッチ
素朴

中学入試頻出作品!
『小学五年生』

17編の短編小説集です。
主人公は小学五年生の男の子たち。
クラスメイトの転校や近しい人の死、ほのかな恋心、ケンカと友情。
「おとな」ではないが「子ども」でもない時期を四季を通して描く心を揺さぶる物語です。

ポイント

中学入試に引っぱりだこの作品です。
大人向けの本格小説で構成やテーマがしっかりしていて読み応えがあります。
その一方で主人公が小学生のため、子どもが読んで感情移入がしやすいのです。
中学入試では設問ごとに作品の構成やテーマの理解度が問われるわけですが、この小説、登場人物の行動や言動、情景描写などから気持ちの変化をくみ取って読む必要がある場面が巧みに描き込まれて出題の宝庫です。
入試に良く出る理由もうなずける納得の一冊です。

1月の一冊

『だいじょうぶ だいじょうぶ』
いとうひろし/作・絵
1,080円 1995年初版
テーマ
信頼
読後感
「だいじょうぶ だいじょうぶ」と声に出したくなる
絵のタッチ
-

世界はすてきでちょっとこわい。でも大丈夫!
『だいじょうぶ だいじょうぶ』

「僕」はおじいちゃんと散歩に出かけるうちに世界のすばらしさやこわさを知ることになります。
何かあるたびごとにおじいちゃんは「だいじょうぶ だいじょうぶ」と声をかけて励ましてくれます。

ポイント

この絵本の最後は大きくなった主人公が病気でふせるおじいちゃんの手を今度は自分がにぎり「だいじょうぶ だいじょうぶ」と声をかける場面で終わります。
自分を励ましてくれた言葉を今度はおじいちゃんにかけるこの主人公はきっと他人に向かっても同じように行動が取れる人でしょう。
とてもこころ温まる一冊です。

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