メニュー

読書から国語力を育てることばの学校【今月の一冊】

2022年 今月のこの一冊

ことばの学校とっておきの
ラインナップの
1冊を紹介します!

12月の一冊

『くいしんぼうのはなこさん』
石井桃子/作 中谷千代子/絵
1,210円 1965年初版
テーマ
子どもの願望
読後感
ユーモラス、どきどき
絵のタッチ
あたたかさぬくもりを感じる。

食べることが大好き!
『くいしんぼうのはなこさん』

食べものは好き嫌いばかりの、わがままな子牛のはなこさん。
そんなわがままが元で、ある日、はなこさんは大変な目にあいます。
はなこさんは、みんなの分のお芋とカボチャを、ひとやま丸々食べてしまうのです。
体はバルーンのようになってしまい苦しむのです。
みんなが嫌いな、あることをして何とか助かるのでした。

ポイント

のんびりとした牧場。
ユーモラスな子牛の表情。
ふんわりとして、あたたかな絵で表現されています。

絵を見ていると、はなこさんのわがままも憎めなくなりそうです。
お話は「こんな、わがままのしたい放題をやってみたい」という夢を見せてくれます。
最後は、こらしめられる昔話風のお話も、落ち着いて読める理由です。
憎めないはなこさんに会ってみたくなります。

2A グレード

11月の一冊

『ねずみのいもほり』
山下明生/作 いわむらかずお/絵
1100円 1984年初版
テーマ
お父さんのアイデア道具
読後感
楽しそう
絵のタッチ
愛らしい、柔らかい

お父さんが作る魔法の道具
『ねずみのいもほり』

芋ほり大会にねずみの7つ子が挑戦です。
お父さんがこの日のために芋ほり用のスコップを作ってくれました。
そのスコップはとっても便利なのです。
大会がある畑まで出かけるためのソリになったり、でんしゃになったり、ケーブルカーになったりできます。
楽しいお出かけになりました。

ポイント

帰り道も、あるものが、ねずみのお父さんのアイデアで乗り物に早変わりします。
このお話のキーマンはなんと言ってもアイデアマンのお父さん。
お父さんの手製の道具で、7つ子が過ごす時間が魔法のように変わるのです。
お父さんが作ってくれた道具や、おもちゃって、それだけで子どもにとっては、このお話のように特別な魅力があるものですね。何かを作ってもらったり、作ったりするとうれしくなりますね。

4A グレード

10月の一冊

『キャベツくん』
長新太/作・/絵
1430円 1980年初版
テーマ
ふれあい
読後感
ほのぼの
絵のタッチ
明るい

ぼくを食べるとキャベツになる!
『キャベツくん』

腹がすいたブタヤマさんは、キャベツくんのことを食べたくなってしまいます。
「ぼくをたべると、キャベツになるよ!」というと、キャベツになったブタヤマさんの様子が空にぽっかり浮かびあがりました。
その後、キャベツを食べてしまうと、動物がキャベツになってしまう様子が次々に空に描かれていきます。

ポイント

絵本をめくるたび、次にはどんなふうに動物がキャベツに変わっているのだろうかと、わくわくします。
そして、めくってみると、その絵の不思議な魅力に見入ってしまいます。
ストーリーを読み取るのではない、この本ならではの不思議な気持ちになるための絵本です。

3A グレード

9月の一冊

『おつきさま でたよ』
寺村輝夫/作 いもとようこ/絵
1320円 1985年初版 あかね書房
テーマ
お月見
読後感
ほんわか
絵のタッチ
かわいらしい、やわらかい

お月さまっておいしそう!?
『おつきさま でたよ』

くりのきえんでは、お月見をすることになりました。特にやる気になっているのがたぬきのぽんたくんです。ぽんたくんはみんなの役割を決めて、お月見をすることを着々と進めます。

ポイント

おだんごもできて、すすきも取って来て、あとは月の出を待つだけだというのに、ところが、空には黒い雲が広がって来てお月さまが見えません。ここでぽんたくんは、先生にある料理を作ってもらい空に飛ばすことにしました。それがなんと!お月さまになるのでした。一気にそれまでの展開がファンタジーに変わるお話が子どもたちは大好きですね。
さて、ぽんたくんは何を空に飛ばしたかは読んでのお楽しみです。

4A グレード

8月の一冊

『ずるやすみにかんぱい!』
宮川ひろ/作 小泉るみ子/絵
童心社 1320円 2009年初版
テーマ
思いやり 自然にふれる
読後感
山に行ってリフレッシュしたい!
絵のタッチ
顔の表情が豊か

ずるやすみは、わるくない!?
『ずるやすみにかんぱい!』

学校でみんなから意地悪をされている雄介くん。
お父さんは、雄介くんにずる休みをしてリフレッシュすることをすすめます。
そして、お父さんと一緒に山が見える町に出かけることにしました。
雄介くんは自然と、そこで出会った人たちの温かみにふれて、元気を取り戻すのでした。

ポイント

雄介くんは山の見える町で出会った人たちから、次々にうち明け話を聞くのです。
みんなも、実は人間関係になやんで「ずるやすみ」をしたことがあるというのです。
雄介くんはみんなの経験談を聞いて、逆に励ましの言葉をかけるほど心に余裕が生まれます。そして、雄介くんが自分たちで作った川原の露天風呂で大きな声をあげて心を開放するシーンは読み手も元気をもらえます。

Bグレード

7月の一冊

『おばあさんのひこうき』
佐藤さとる/作 村上勉/絵
1973年初版 1,650円
テーマ
家族
読後感
わくわくする
絵のタッチ
素朴

空を飛んで、おばあちゃんが会いに来てくれます!
『おばあさんのひこうき』

編み物上手な一人暮らしのおばあさん。
チョウの羽をじっくり観察して、その模様通りに編み物を作ったら、
なんと、ふわりふわりと、その編み物が浮き出したのでした。

おばあさんは、飛行機を編んで作ることにしました。
孫が住む港の町まで、それに乗って空の旅をするためです。

ポイント

お話の始まりは淡々としています。
編み物好きのおばあさんといっしょに、
ゆったりした生活を楽しんでいる気分になれます。

そんな生活に、突如、事件が起こります。
編んでいる編み物が宙に浮き始めるのです。
不思議なできごとが起こり、お話に変化が生まれて、
面白さを、さらに感じるところです。

その後、編み物に乗って夜空を旅するおばあさん。
ところが、この旅が終わると、
おばあさんは大好きな編み物をしなくなってしまいます。

今までずっと孫家族と同居することを断り続け、
一人暮らしをしていたのですが、
この旅をきっかけに孫のいる港の町へ移り住むことを決意します。

その理由は特に物語には描かれてはいません。

なぜ、おばあさんは大好きな編み物をやめてしまったのか。
一人暮らしを止めて、同居を決意するのか。

なぜなんだろうと想像してみましょう。

自分だけの編み物の世界から、孫との同居に踏み出す
変化を受け入れる様子が、そこに描かれています。

変化を受け入れること。
自分にとって本当に大切なものは何なのかを考えること。

このおばあさんにとって、この「心の旅」は必要だったのです。

みなさんにとって、今本当に必要な変化とは何でしょう。
そんな問いかけを秘めた物語です。

Bグレード

6月の一冊

『とけいのほん①』
まついのりこ/作・絵
990円 1973年初版
テーマ
時計の見方
読後感
なるほど!
絵のタッチ
余白を使ってシンプル

おうちにアナログ時計はありますか?
『とけいのほん①』

時計の短針と長針の「ちび」と「のっぽ」。
二人が作る色んな時間をみんなが「なんじ」か考えます。

ポイント

時計の学習は学校では小学校1・2年生ごろ行います。
ただ、中には3歳くらいになって数を数えることを覚えるのと同時に時計に興味を持つお子さまもいます。
この絵本は夢のあるお話と絵に乗せて時計の見方を覚えることができるしかけです。
お子さまが時計に興味が出てきたら、ぜひ手に取ってみてください。
ご家庭にデジタル時計しかないようでしたら、合わせてぜひアナログ時計を置いてみてください。
アナログ時計は時間経過を円に置き換えて認識する道具。
こういった置き換えの思考は習慣が物を言うからです。

3Aグレード

5月の一冊

『くちぶえ番長』
重松清/作 塚本やすし/絵
572円 2007年初版
テーマ
友情・別れ・思い出
読後感
いつまでも たえることなく 友だちでいよう ♪
絵のタッチ
絵日記のような絵

『くちぶえ番長』

小学4年生のツヨシのクラスに、くちぶえと一輪車の上手な転校生の女の子がやって来ました。
それが「くちぶえ番長」こと川村マコトです。
小さいころに父親を亡くしたマコトですが、強くて、やさしく、頼もしい番長のような存在です。
そんなツヨシとマコトの友情物語です。

ポイント

ぐいぐい読ませるストーリー。
登場人物のキャラクターのおもしろさ。
人情の機微に通じた心理描写。
エピローグやプロローグを駆使した本格的な構成。
再読すると、おもしろい仕組みに気づきます!
読みやすくても深い!
そんな重松清の作品ならではの読後感に浸れる一冊です。

Dグレード

4月の一冊

『さくら子のたんじょう日』
宮川ひろ/作 こみねゆら/絵
1,430円 2004年初版
テーマ
家族・アイデンティティ・感謝
読後感
じーんとする
絵のタッチ
お人形のよう

生まれてきてよかった!
『さくら子のたんじょう日』

さくら子はお母さんといっしょに自分の名前の由来になったさくらの木を訪ねます。
その木は栗の大木が折れて、その先端からさくらの木が自然についだみたいにはえている木でした。
この木は、くりの木がさくらの子を身ごもったような様子なので『みごも栗』と呼ばれていました。
お母さんは子どもをさずかり、みごもるようにこの木にお願いしたのだそうです。
こうしてお母さんがお願いしてさずかったのがさくら子なのです。

そんなさくら子には小さいときから自分の出生について気になっていることがありました。そのことをお母さんに聞いてみようと思いながらなかなか聞くことができないまま小学6年生になりました。

さくら子は自分から『みごも栗』を見に行こうとお母さんを誘います。
そうして、花の下でお弁当を二人で食べ終わるとお母さんは打ち明け話を始めるのでした。

ポイント

「自分とはいったい何者なんだろう」という思春期特有の自己意識の芽生えがえがかれています。
生まれてきたことに感謝する気持ちあふれる作品になっています。

3月の一冊

『キャベツくん』
長新太/作・/絵 
1,430円 1980年初版
テーマ
ふれあい
読後感
ほのぼの
絵のタッチ
明るい

ぼくを食べるとキャベツになる!
『キャベツくん』

お腹がすいたブタヤマさん。
キャベツくんのことを食べたくなってしまうのです。

キャベツくんが「ぼくをたべると、キャベツになるよ!」と言うと、
その瞬間、キャベツになったブタヤマさんが空にぽっかり浮かびあがりました。

その後、次々に現れる動物たちがキャベツくんを食べてしまうおうとすると、
動物たちがキャベツになった姿が空に浮かびあがるのです。

ポイント

絵本をめくるたび、次はどんなふうに動物がキャベツに変わるのだろうか。
わくわくします。
めくってみると、その絵の何とも不思議な魅力に見入ってしまうのです。

ストーリーを読み取るのではない。
ナンセンスなこの本ならではの不思議な魅力に魅了され、おかしな気持ちになる絵本です。

2月の一冊

『おにたのぼうし』
あまんきみこ/作 いわさきちひろ/絵 
1100円 1969年初版
テーマ
他者
読後感
せつない
絵のタッチ
あわい

豆をまかれるオニの気持ちがわかる!?
『おにたのぼうし』

節分の日のお話です。
豆をまいて追われるオニ。
そんなオニですが、実はとても心やさしい思いやりのある存在だったというお話です。

心やさしいオニの子「おにた」
病気のお母さんを看病する女の子のために、変装して、ごちそうを持ってきました。
ところが、その女の子は「おにた」をオニだと知らないので、豆まきがしたいと言い始めるのです。

ポイント

この絵本は豆まきで追い払われるオニの視点で描かれた作品です。
女の子が「おにた」をオニと知らず、無邪気に豆まきがしたいという言葉が「おにた」にとっては、一番つらいのです。
悪気はなくとも、知らずに人を傷つけてはいないだろうか。
自分が、豆まきのように当然のようにしていることで、誰か人を傷つけていないか。
そう自問させる力のある作品です。

1月の一冊

『吾輩は猫である』(上)
夏目漱石/作 村上豊/絵
1905年初版
テーマ
ユーモア・風刺
読後感
おかしい
絵のタッチ
水彩・淡い・まるい

トラじゃない!わがはいはネコである。
『吾輩は猫である』(上)

くしゃみ先生のうちに飼われる名もない猫が主人公。
先生とそれを取り巻く人間たちを観察して、人間というものの愚かさを批判します。

ポイント

作品発表から100年を過ぎて、なお、愛されている小説です。
長い小説ですが、漱石後期の作品に見られる深刻な人間関係を扱った作風ではありません。

ひょうひょうとして、ユーモアがきいた作品です。
たくさんの小さなエピソードを寄せ集めたような内容です。

飼い主のくしゃみ先生は夏目漱石自身がモデルです。
飼い猫の視点を借りて、書き手自身が自分に批判を加える書き方なのです。

猫の調子はこんな感じです。

「吾輩は人間と同居して彼らを観察すればするほど、彼らはわがままなものだと断言せざるをえないようになった。」

「どうしても我ら猫族が親子の愛をまったくして美しい家族生活をするには人間と戦ってこれをそう滅せねば」

「いくら人間だって、そういつまでも栄えることもあるまい。まあ気を長く猫の時節を待つがよかろう」

こんな感じで愉快な作品です。
ネコと一緒に楽しい1年にしましょう。