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読書から国語力を育てることばの学校【今月の一冊】

2023年 今月のこの一冊

ことばの学校とっておきの
ラインナップの
1冊を紹介します!

12月の一冊

『きょうとあしたのさかいめ』
最上一平/作・渡辺有一/絵
1,200円 2000年初版
テーマ
古き良き日本
読後感
ぽかぽかあったか
絵のタッチ
カラフルな木版画風

来年もいい年になりますように
『きょうとあしたのさかいめ』

今日は大晦日。遠くに働きにいっているお父さんが帰ってきます。みのりはお父さんに会えるのがとても楽しみでした。年越しそば、除夜の鐘、餅つきとお正月は楽しいことがいっぱいです。
大晦日がお正月になる瞬間には何があるのかな?とみのりは気になっています。今日と明日の境目には何があるのかな?

ポイント

多少の差こそあれ、多くの日本人の心に残っているであろう大晦日の景色が郷愁を誘います。どれだけ科学が進歩しても人の心は受け継がれていく、または受け継がれて欲しいという願いも込めて、是非こどもたちに読んでもらいたい1冊。4ページと5ページの絵の中の、誰が「みのりとお母さん」かお子さんと一緒に探してみるのも面白いでしょう。

11月の一冊

『きつねのかみさま』
あまんきみこ/作 酒井駒子/絵 
ポプラ社 1210円 2005年初版
テーマ
思いやり
読後感
ほのぼの
絵のタッチ
繊細

きつねも、なわとびがしてみたい!
『きつねのかみさま』

姉と弟の二人は、なわとびのひもを公園に忘れてしまい、取りに戻りました。
すると、そこではきつねの子どもたちが忘れ物のなわとびを使ってみんなで遊んでいるのでした。

ポイント

筆者・絵本画家ともに人気・実力のある2人です。
だからでしょうか。
ストーリーの運びに気負うところがなく、きつねと人が話したり、いっしょに遊びだしたりしても違和感がありません。
いつの間にかに、読者は、すっと、絵本の世界へ誘い込まれているのです。
しかし、お話はファンタジーであることを生かすというよりは、登場人物たちの感情にていねいに寄りそい、気持ちを表現することを大切にします。
そのため、読後は、おおらかな気持ちになります。
ただ、昔話のおおらかさとは、また違った現代的なきめの細かいベールに包まれているような印象です。
最後には読者へ贈り物のような一言が待っています。
それが何かは読んでみてからのお楽しみです。
A グレード

10月の一冊

『ねずみのいもほり』
山下明生/作 いわむらかずお/絵  ひさかたチャイルド
1100円 1984年初版
テーマ
お父さんのアイデア道具
読後感
楽しそう
絵のタッチ
愛らしい、柔らかい

お父さんが作る魔法の道具
『ねずみのいもほり』

芋ほり大会にねずみの7つ子が挑戦です。
お父さんがこの日のために芋ほり用のスコップを作ってくれました。
そのスコップはとっても便利なのです。
大会がある畑まで出かけるためのソリになったり、でんしゃになったり、ケーブルカーになったりできます。
楽しいお出かけになりました。

ポイント

帰り道も、あるものが、ねずみのお父さんのアイデアで乗り物に早変わりします。
このお話のキーマンはなんと言ってもアイデアマンのお父さん。
お父さんの手製の道具で、7つ子が過ごす時間が魔法のように変わるのです。
お父さんが作ってくれた道具や、おもちゃって、それだけで子どもにとっては、このお話のように特別な魅力があるものですね。何かを作ってもらったり、作ったりするとうれしくなりますね。
4A グレード

9月の一冊

『おつきさま でたよ』
寺村輝夫/作 いもとようこ/絵
1,320円 1985年初版 あかね書房
テーマ
お月見
読後感
ほんわか
絵のタッチ
かわいらしい、やわらかい

お月さまっておいしそう!?
『おつきさま でたよ』

くりのきえんでは、お月見をすることになりました。特にやる気になっているのがたぬきのぽんたくんです。ぽんたくんはみんなの役割を決めて、お月見をすることを着々と進めます。

ポイント

おだんごもできて、すすきも取って来て、あとは月の出を待つだけだというのに、ところが、空には黒い雲が広がって来てお月さまが見えません。ここでぽんたくんは、先生にある料理を作ってもらい空に飛ばすことにしました。それがなんと!お月さまになるのでした。一気にそれまでの展開がファンタジーに変わるお話が子どもたちは大好きですね。
さて、ぽんたくんは何を空に飛ばしたかは読んでのお楽しみです。

8月の一冊

『うきわねこ』
蜂飼耳/作 牧野千穂/絵
1540円 2011年初版 ブロンズ新社
テーマ
秘密のできごと
読後感
宙に浮いたような心地
絵のタッチ
柔らかいのに厚みがある

空飛ぶうきわをつけて海へ行こう!
『うきわねこ』

おじいちゃんからえびおにお誕生日プレゼントが届きました。浮き輪の贈り物でした。「満月の夜までしまって置くように」という手紙がいっしょに入っていました。満月の夜にえびおが浮き輪をつけてみると・・・・・・

ポイント

えびおが浮き輪をつけるとなんと空に浮かび上がることができたのです。空の上では同じく浮き輪をつけたおじいちゃんが待っていました。そして、おじいちゃんと秘密の夜のおでかけをすることになります。秘密にしておくようにおじいちゃんに言われたえびお。2人だけの秘密の共有。それは少し大人になることなのでしょうか。
2A グレード

7月の一冊

行事の由来えほん 『たなばたものがたり』
舟越克彦/作 二俣英五郎/絵
1320円 2001年初版 教育画劇
テーマ
夫婦愛、星座
読後感
ロマンチック
絵のタッチ
水彩画の淡い色と線

天の川にカササギが飛ぶ
行事の由来えほん 『たなばたものがたり』

おりひめとひこぼしが年に1度、7月7日にだけ会う「たなばた」の由来。

ポイント

おとなになると細かな部分はすっかり忘れてしまっていて、あらためて読み直してみると新鮮な発見があって面白いのが昔話です。今回わたしが一番はっとしたのはおりひめとひこぼしが再会する場面でした。二人が天の川を渡る時にカササギの群れがやって来て、橋になってくれたのでした。この絵本では見開きページを使い、淡い色合いの背景にカササギの群れがアーチを描いて飛んでいて牧歌的な雰囲気でした。橋はカササギだったということをすっかり忘れていました。昔の中国ではベガ(おりひめ)とアルタイル(ひこぼし)の間にある白鳥座がカササギに見えたようです。最後のページに詳しく由来が書かれたページもためになります。星座の話もからめながら、おとなと子どもがいっしょに読むことで話が深まりそうです。
4A グレード

6月の一冊

『キャベツくん』
長新太/作・/絵
1430円 1980年初版
テーマ
ふれあい
読後感
ほのぼの
絵のタッチ
明るい

ぼくをたべると、こうなる!
『キャベツくん』

腹がすいたブタヤマさんは、キャベツくんのことを食べたくなってしまいます。
「ぼくをたべると、キャベツになるよ!」というと、キャベツになったブタヤマさんの様子が空にぽっかり浮かびあがりました。
その後、キャベツを食べてしまうと、動物がキャベツになってしまう様子が次々に空に描かれていきます。

ポイント

絵本をめくるたび、次にはどんなふうに動物がキャベツに変わっているのだろうかと、わくわくします。
そして、めくってみると、その絵の不思議な魅力に見入ってしまいます。
ストーリーを読み取るのではない、この本ならではの不思議な気持ちになるための絵本です。
3A グレード

5月の一冊

『ふしぎなたいこ』
石井桃子/作 清水崑/絵
880円 1953年初
テーマ
奇想天外
読後感
急転直下
絵のタッチ
さらりとした筆絵 ユーモラス

はながどんどん高くなる
『ふしぎなたいこ』

げんごろうさんはふしぎなたいこを持っています。
たいこの片方をたたいて「鼻高くなれ、鼻高くなれ」という言うとピノキオのように鼻がどんどん高くなります。
反対側をたたいて「低くなれ、低くなれ」と言うと高くなった鼻が低くなります。
人を喜ばせるために使うには良いのですが、げんごろうさんが自分だけのために使ったために事件が起こります。

ポイント

調子にのって、たたいていたら、鼻が天国まで届いてしまうのです。
結末はある生き物にげんごうろうさんがなってしまうという話です。
いったい何だと思いますか。虫ではありません。
2A グレード

4月の一冊

『宿題ひきうけ株式会社』
古田足日/作 長野ヒデ子/絵
1,320円 1966年初版
テーマ
社会風刺
読後感
はっとする
絵のタッチ
太い筆致 めぢからがある

なぜ宿題をしなければならないのか
『宿題ひきうけ株式会社』

宿題を本人のかわりにやってくれる会社。「そんな会社があったらいいなあ」と会社を作ったのはサクラ小学校の5年生たちです。宿題ひきうけ会社の仕事は宿題をやる係と宿題をやってほしいというお客さんの注文を取って歩く係りに分かれています。どちらもなかなか大変な仕事なのでした。
あるとき、学校の学級会で会社の存在を先生に知られてしまいます。先生から会社は解散を命じられてしまうのでした。

ポイント

お話の展開はその後、宿題を学校から与えられる仕事ととらえ、大人の社会の労働問題とつなげて語られていきます。競争原理で成り立つ「社会」とはいったい何なんだろうという大きなテーマに切り込んでいきます。
D グレード

3月の一冊

『赤毛のアン』
L.M.モンゴメリ/作 村岡花子/訳 HACCAN/絵
858円 1908年初版
テーマ
成長
読後感
わくわく
絵のタッチ
現代的・かわいらしい

個性的な少女と美しい四季の物語
『赤毛のアン』

孤児のアンはマシュウおじさんとマリラおばさんの家へ引き取られます。
そして、おじさん、おばさんや学校で出会う友人たちとの交流を通して、アンが自分を見つめ、生きる喜びを感じる瞬間、瞬間が描かれていきます。

ポイント

風変りな少女という印象のアンが主人公です。
人の話を聞き入れられず、自分の話ばかりするような、少し困った人なのです。
ところが、読み進めていくと、アンの個性として、その違和感はむしろプラスに変わります。
生き生きとした人間性が魅力的に感じるようになります。
アンを引き取ったマシュウやマリラがそうなったように、アンの想像力あふれる話を続けてもっと聞きたくなってしまいます。

たぐいまれな想像力と純粋な(まっすぐで、それだから失敗もする)性格の持ち主・アンの成長がカナダのプリンスエドワード島の美しい四季を背景に絵物語のように語られます。

E グレード

2月の一冊

『たぬきのじどうしゃ』
ちょう しんた/作・/絵
1320円 1987年初版
テーマ
ナンセンス
読後感
奇妙、不思議
絵のタッチ
ぐいぐい塗られた絵

解決しないから面白い!
『たぬきのじどうしゃ』

たぬきのおじさんが車に乗って走っていると、さかながふるえながら車の中に飛び込んできて助けを求めます。かいぶつが出たので助けてほしいと魚は言うのでした。

ポイント

たぬきのおじさんは、かいぶつに遭遇します!
かいぶつと戦ったり、ひょんなことで助かったりと、たいていのお話は予定調和な物語の流れになるのですが、この作者はそれを良しとしません。物語に乗っかって行く心地良さがこの作品の価値ではありません。読み手が拍子抜けしたような感覚のままお話は終わってしまいます。しかし、それがなんとも言えない魅力です。余韻に残る乾いたユーモアに、一件落着しない世界こそおもしろいと気づかされます。
4A グレード

1月の一冊

『赤毛のアン』
L.M.モンゴメリ/作 村岡花子/訳 HACCAN/絵
858円 1908年初版
テーマ
成長
読後感
わくわく
絵のタッチ
現代的・かわいらしい

個性的な少女と美しい四季の物語
『赤毛のアン』

孤児のアンはマシュウおじさんとマリラおばさんの家へ引き取られます。
そして、おじさん、おばさんや学校で出会う友人たちとの交流を通して、アンが自分を見つめ、生きる喜びを感じる瞬間、瞬間が描かれていきます。

ポイント

風変りな少女という印象のアンが主人公です。
人の話を聞き入れられず、自分の話ばかりするような、少し困った人なのです。
ところが、読み進めていくと、アンの個性として、その違和感はむしろプラスに変わります。
生き生きとした人間性が魅力的に感じるようになります。
アンを引き取ったマシュウやマリラがそうなったように、アンの想像力あふれる話を続けてもっと聞きたくなってしまいます。

たぐいまれな想像力と純粋な(まっすぐで、それだから失敗もする)性格の持ち主・アンの成長がカナダのプリンスエドワード島の美しい四季を背景に絵物語のように語られます。

E グレード