ことばの学校ブログ
心をゆさぶる名セリフの数々には、作品を世に送り出した筆者の魂が込められていますね。
ことばの学校 スタッフが選んだ名セリフ、名文をご紹介していきます。
まずは、三浦綾子 作 「塩狩峠」より
主人公の信夫は士族の子。幼少のころ、町人のせがれである虎雄につきおとされた後の場面で
信夫は、虎雄に落とされたのではないと、頑迷に言い張ります。
それを聞いた父の貞夫は、信夫が年少の虎雄をかばっての態度だと思っているのですが、
信夫は「町人の子になんかに屋根から落とされたりするもんですか」と言ってしまいます。
そのあとの貞夫のセリフです。
「信夫! 虎雄君の指は何本ある?」
「五本です」
「では、信夫の指は何本か? 六本あるとでもいうのか」
(中略)
「いいか。人間はみんな同じなのだ。町人が士族よりいやしいわけではない。
いや、むしろ、どんな理由があろうと人を殺したりした士族の方が恥ずかしい人間なのかもしれぬ」
※中学入学試験では、神奈川県の聖光学院でこの場面が出題されたことがあります。