ことばの学校ブログ
今日は、セリフではありませんが、重松清「小学五年生」に収録されている
「葉桜」から、この作品の主題を象徴する一節をご紹介します。
「少年は桜の木を振り向いた。
目を細め、まなざしの焦点をゆるめても、緑いろの葉っぱはピンク色の花には変わらない。
来年のお花見の頃には、たぶん、この町のことはあまり思いださなくなっているだろうな、と思った。」
この場面は、転校した主人公の少年がゴールデンウィークに1カ月ぶりに前の学校に行き、
同窓会をやろうと集まった場面です。
あれほど仲良しだったのに、友だちは思ったほど集まらず、集まった友だちも以前ほどの親しみがなくなっていた。
桜が花を散らし、葉桜へと姿を変えてしまう情景描写は、
小学五年生の少年が人生ではじめて経験した、人の心の移ろいの早さを象徴するものとして描かれたものです。
そして自分自身の心の変化にも、少年はとっくに気が付いているのです。
何年も前から中学入試の定番となってしまった「小学五年生」
今年の入試問題でも、依然として栄東中、城西川越中などで出題されました。
中学受験生必読です。