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読書から国語力を育てる「ことばの学校」

ことばの学校ブログ

これぞ入試国語②-解答編

これぞ入試国語②

慶応義塾中等部_解答編

先日の解答編をお届けします。問題のおさらいからです。

次のア~ケの文には、ことばの使い方に誤りがあるものが四つあります。

ア 世間を騒がせた事件の真相が明るみになる。
イ 何を言ってもまともに相手にしてもらえず、とりつく島もない。
ウ 彼は気の置けない友人なので、腹を割って話すことができる。
エ 君に教えてもらった答えだけど、実際は違かったよ。
オ かつての友人の活躍を風のうわさに聞く。
カ 彼は押しも押されもせぬ球界の四番打者だ。
キ 明治の文豪(ごう)である漱石は、先見の明がある作家だった。
ク 第一志望の学校に入学するため、寸暇を惜しまず学問に励む。
ケ 有名人の突然の訪問で、会場は上を下への大騒ぎとなった。

この中で、用法の誤りがあるのは以下の4つです!

ア 「明るみになる」

「明るみ」とは、「明るい所」のほかに、「表立った所。公の場」という意味があり、
「真相」が「明るみになる」は誤りですね。正しくは「明らかになる」か「明るみに出る」

エ 「違かった」

大人には違和感のある「違かった」も、子供の世界ではもはや当然のように使われている
気がします。「めんどい」「むずい」などもそうですね。
「違う」は、五段活用動詞なので、

・違わない(未然形)
・違います(連用形)
・違う(終止形)
・違うとき(連体形)
・違えば(仮定形
・違え(命令形
・違おう(未然形) という活用が原則です。ご覧のとおり、「違かっ」という活用はありません。

過去の助動詞「た」には、連用形の「違い」が接続し、「違いた」となるのですが、
発音の便宜上、これが変化して「違った」(「促音便」といいます)となります。
なんでわざわざ一音加えて、「違かった」となってしまうのか不思議。

「美しかった」「楽しかった」のように、形容詞の変化と混同した結果でしょうか。

ちなみに「書いた」は本来「書きた」が発音しづらいので、変化したもので
イの段「き・し・ち・に……」が「い」に変化したことから「イ音便」といいます。

「読んだ」「飲んだ」は、「読みた」「飲みた」の変化で「撥(はつ)音便」といいます。

オ 「風のうわさ」

なんだか、全然ふつうに感じてしまうのは私だけ(笑)?

でも、正しくは「風の便り」ですね。

ク 「寸暇を惜しまず」

これが今回の中ではもっとも難しいと思います。
正解は、「骨身を惜しまず」です。「苦労をいとわない」という意味です。
「寸暇」とは、「ほんの少しの空き時間」という意味ですから、
「寸暇」を使うのであれば、「惜しんで」としないとおかしなことになってしまいます。
「寸暇を惜しんで」となって、「ほんの少しの時間でも、もったいないと思って」となるわけです。

実は、「文化庁」が毎年行っている「国語に関する世論調査」では、
平成22年、この成句が調査の対象となっていて、
57.2パーセントが「寸暇を惜しまず」が正しいと回答してしまっています(笑)

60%近い大人が間違って使っているんだから、子供には酷な試験問題ですね。
お子さまの志望校に慶応中等部をお考えの方は、この世論調査は要チェックですね!

http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/yoronchousa/